事業者には、従業員が安心して気持ちよく働くことができ、その能力を十分に発揮することができるように、快適な職場環境を保持するために取り組むことが求められます。「内部公益通報体制」を整備することもそのひとつです。

職場内のパワーハラスメント、セクシャルハラスメント等の防止についても対策を講じることが求められます。最近は、有力な取引先から自社従業員へ向けられたセクハラ行為へどう対応すべきだったのか、考えさせられる事件がありました。
快適な職場環境を保持するために「この対策を導入しておけば備えは万全!」というような安易な正解はなく、そもそもハラスメントにあたるかどうかの評価が相対的な場合もあり、事業者の取組は果てしないように感じられることすらありますが、柔軟かつ厳しく、慌てず遅れず、近視眼にならず細部を見落とさず、試行錯誤を繰り返しながら自社に合う対応策を見つけていくことが肝要と思います。
関係省庁からも参考となる資料が多く公表されていて、大変参考になります。

「〇〇ハラ」のなかで、私がやや場面が違うと感じているのが「カスタマーハラスメント」です。「カスタマーハラスメント」とは、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、 当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と考えられています。ここで登場する「顧客等」(いわゆる加害者にあたる相手方)は、主に社外の人物であり、商品やサービスを利用している消費者(カスタマー)である場合が想定されます。「顧客等」の要求が自社で対応すべきまっとうな苦情であって、必ずしも不当とは言えない場合も大いに考えられます。
相手方が消費者であることで、他のハラスメント対策とはやや違う対応が求められますが、これへの対応も従業員が安心して働くことができる職場づくりの一環です。是非取り組んでほしいものです。

事業者の従業員も経営者も、職場を離れれば誰もが消費者です。事業者と消費者、立場が変われば見え方や言い分も違います。
「カスタマーハラスメント」については、消費者が正当な権利行使を超える不当な要求や迷惑行為によって事業者の業務を妨害することのないよう、消費者側への啓発も進んでいます。

※参考資料

【厚生労働省】
・職場におけるハラスメントの防止のために
 (セクシュアルハラスメント/妊娠・出産等、育児・介護休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html

・あかるい職場応援団

【消費者庁】
・カスタマーハラスメント防止のための消費者向け普及・啓発活動

・「はじめての公益通報者保護法」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/whisleblower_protection_system/hajimete