
2025年6月4日、改正公益通報者保護法が成立しました。2027年までに施行されます。
改正法の概要はこちらをご参照ください。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/whisleblower_protection_system/overview/assets/consumer_partnerships_cms205_250611_01.pdf
今回の様々な改正点のうち、私が注目している点は大きく2点あります。
1点目は、法が保護対象とする「公益通報者」に、事業者と業務委託関係にある、いわゆるフリーランスが追加されたことです。
保護の対象となる通報者の範囲は、前回の法改正(2022年施行)で退職から1年以内の退職者まで広げられましたが、さらに前進です。組織の内部で秘匿される不正行為を現場で知りうる立場にある方々を保護の対象に加えることで、不正への感度が高まり、事業者における早期発見と早急な対応が促されます。
2点目は、本法に初めて刑罰が導入されたことです。
これまで、公益通報をしたことを理由とする解雇や不利益取扱いは「無効」と規定されているものの罰則がなく、これでは抑止にならない、実効性を欠くとの批判が多かった点です。今回の改正では、公益通報をしたことを理由とする解雇又は懲戒処分を行った事業者および関係者に対して直罰(法人に対して3,000万円以下の罰金、関係者に対して6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金)が規定されました。
このほか今回の改正では、事業者が労働者等に対して正当な理由なく公益通報をしない旨の合意を求める行為や、公益通報者を特定する行為を禁止することが明記され、不利益な取扱いを受けた労働者等が訴訟を提起した際の民事訴訟上の立証責任を転換する規定が入るなど、公益通報者の保護へ大きくシフトした法改正と評価できます。
前回の改正では、従業員数が300人を超える事業者に対して内部通報体制の整備が義務付けられ、事業者の内部通報担当者に守秘義務も課されました。多くの事業者が試行錯誤を繰り返しながら真摯に取り組みを進める一方で、法に対する理解や周知が不十分なために通報者において取り返しのつかない事態に至ってしまった痛ましい事案も起こっています。法を所管する消費者庁の関係者や検討会関係者にとっても痛恨の極みだったのではないかと推察します。
この法はいたずらに通報を奨励するものではない、と私は理解しています。通報を真摯に受け止めて組織内の不正の芽を早期に摘むこと、そのために勇気を出して通報してくれた労働者等をしっかり保護すること、それが国民生活の安定と社会経済の健全な発展につながるものと考えます。
今回の改正で、消費者庁の命令権や立入検査権限も新設されました。消費者庁におかれては、まずは改正法が正しく理解されるよう、民間事業者のみならず地方公共団体(首長、議会も含めて)に対しても一層の周知に努めていただくことを期待します。