
消費者庁において2024年5月に設置された「公益通報者保護制度検討会」(座長:山本隆司 東京大学大学院法学政治学研究科教授)が報告書を取りまとめ、本日(12月27日)公表されました。報告書では、公益通報者の探索や公益通報を妨害する行為の禁止、公益通報を理由とする解雇や懲戒を行った事業者及び個人に対する刑事罰の導入のほか、公益通報者が事業者に対して訴訟提起した際の懲戒処分等の違法性の立証責任を事業者側へ転換することも提言されています。この報告書を受けて、消費者庁は法改正へ動き出すことになります。
「公益通報者保護法」は、2004年に施行された後ようやく2020年に一部改正がなされました。事業者には内部通報対応体制の整備が義務付けられ(従業員数が300人以下の事業者は努力義務)、通報対応従事者には守秘義務も課されることになり、多くの事業者や組織におかれては鋭意対応中のことと思われます。組織の規模や固有の事情に応じて最適な内部通報体制が整備されることは大変望ましく、制度が正常に機能することで不正の芽の早期発見と自浄作用の発揮につながれば、将来の不正の芽吹きを防ぐことにもつながるものと考えます。
前回の法改正では、対応従事者に課される守秘義務には罰則が付けられた一方、公益通報者へ不利益取扱いを行った事業者に対するペナルティは盛り込まれませんでした。多岐にわたる論点のうち現実的な着地点を探って合意にこぎつけた論点を先行して進めた感が否めず、まずは法改正を実現することを目指して前進主義で進めた結果、ややバランスを欠いたという印象を抱いていたため、今回の報告書で解雇等を行った事業者に対する刑事罰の導入が提言されたことは、公益通報者保護制度の実効性向上に資する大きな前進と受け止め、安堵しています。
他方で、法改正や体制整備が進んでも、それが労働者に周知されず正しく理解されていなければ画餅にすぎません。せっかく立派な通報窓口が整備されていたにも関わらず担当者に誤解があったり労働者に信頼されていなかったりして十分に機能しなかった例が散見されるのも残念な事実です。
公益通報者保護制度の充実と実効性向上に向けて、消費者庁には法改正とともに制度の一層の周知に努められることを期待します。
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